職務経歴書を開いたものの、「顧客名も、システムの詳しい構成も書けない」と手が止まる。守秘義務がある仕事では、どこまで伝えてよいか迷いますよね。
書き始める前に、開示できる範囲を確かめる
社名の伏字や数字の丸め方だけでは、出してよい情報かは決まりません。説明できると確認した経験から整理します。
- 規程・契約:勤務先や顧客の開示ルールを確認する。判断できない情報は記載を保留する。
- 自分の担当:開示できる経験を一件選び、工程・役割・行動を分ける。
- 数値や資料:顧客情報、非公開の構成、会社の資料を混ぜない。チームの成果と自分の実績も分ける。
- 送る直前:添付、コメント・変更履歴、共有画面まで確認する。
今日やること:開示範囲が分かる経験を一件、三つの短い文にしてみてください。範囲が不明なら、文章より先に確認先を探します。
この記事では、会社のコードや設計書を持ち出さず、自分の経験を整理する手順を紹介します。書き方の例と、面談で詳しい資料を求められたときの返答文も用意しました。
社名を伏せるだけで、出してよいとは決めない
勤務先・顧客との契約、就業規則、情報管理のルールで、外部へ話せる内容は変わります。顧客名を「A社」に変えても、未公開の構成、取引規模、障害の詳細などが残っていれば、開示できるとは限りません。
INPIT(工業所有権情報・研修館)の営業秘密管理FAQは、技術者を採用する企業に対し、前職の秘密情報を持ち込ませないことや、本人が負う秘密保持義務の確認を案内しています。応募資料も社外へ渡すものとして扱い、判断できない情報は送る前に確認してください。出典:INPIT知財総合支援窓口・営業秘密管理FAQ
ここで示す書き方は、特定の秘密保持契約に適合すると保証するものではありません。契約の解釈が必要な場合は、勤務先の規程や相談窓口、必要に応じて専門家へ確認します。転職エージェントの「その表現なら大丈夫」という回答だけで、勤務先の開示ルールを変更できるわけではありません。
まず、経験を「使える・確認する・出さない」に分ける
次の図と表は編集部の整理案です。「公開されている情報」と「自分が担当した事実」も別々に確認しましょう。会社が導入事例を公開していても、自分の役割や未公開の詳細まで公表されているとは限りません。

| 区分 | 考え方 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 開示できると確認できた事実 | 担当工程、一般的な役割、使用技術などで外部説明が認められる範囲 | 事実に沿って記載し、チームと自分の仕事を区別 |
| 確認が必要な情報 | 顧客名、数値、細かな構成、未公開の機能や計画など | 応募資料にはまだ入れず、開示範囲を確認 |
| 会社の秘密情報・他者の個人情報 | 社外秘資料、ソースコード、顧客データ、認証情報など | 持ち出し・添付・画面共有をしない |
職歴の年月や役職など応募書類に必要な事実まで、架空の会社や数字へ置き換える必要はありません。書けない項目は、事実を偽らず、開示範囲の制約があることを説明します。
資料の代わりに、工程・役割・行動を言葉にする
キッカケエージェントの職務経歴書ガイドは、技術名に加えて習熟度、担当した役割や課題への取り組みを示す書き方を案内しています。この記事では、開示できる事実だけを使い、次の順に整理する方法を提案します。出典:キッカケエージェント・職務経歴書ガイド
- 担当工程:設計・実装・テスト・運用など、実際に担った範囲
- 自分の役割:担当者、レビュー担当、進捗調整など、任されていたこと
- 課題と行動:何に困り、どの範囲で何を変えたか
- 結果:開示できて裏付けもある変化。数字が不明・非公開なら無理に入れない
- 技術の範囲:業務で自力対応したもの、補助で使ったもの、学習だけのもの

次は書き方を示す架空の例です。自分にない経験として転用せず、実際に担当し、開示できる内容に置き換えてください。
| 避けたい説明 | 説明の組み立て例 |
|---|---|
| 社外秘の設計書を添付する | 業務システムの機能追加で、詳細設計と実装を担当。レビューで指摘された境界条件を整理し、テスト項目へ反映した |
| 障害ログの画面を見せる | 運用担当として、一次切り分けと関係チームへの連絡を担当。確認項目を手順にまとめ、引き継ぎ時の説明に利用した |
| 開示できない削減額を別の数字に変える | 繰り返し作業の手順を見直した。具体的な件数・削減額は開示できないため、担当範囲と変更した手順を説明する |
表の言い換えも、必ず安全になる定型文ではありません。業種・時期・技術・規模などの組み合わせで案件が推測されることがあるため、細かくすればよいとは考えず、必要な情報だけ残します。
数字を出せないとき、成果はどう書く?
改善率や売上を出せない場合は、実行したことと確認できた変化を分けます。「手順を作成した」「レビューの観点を統一した」など、自分が説明できる行動から書けます。効果を測っていないのに「工数を30%削減」などの数値を足す必要はありません。
- 実施した事実だけ分かる:何を、どこまで担当したかを書く
- 効果は確認できるが数値を開示できない:開示可能な範囲の変化を述べる
- チーム全体の成果:自分の担当と、他メンバーの担当を分ける
- 概数でも非公開の情報:丸めれば使えると判断せず、記載を保留する
一般的な職務要約や書類全体の組み立ては、職務経歴書テンプレートの使い方で確認できます。勤務時間や勤務地の希望は、仕事の成果とは別のメモにしておくと整理しやすくなります。
面談で詳しい情報や資料を求められたとき
説明できない範囲を先に伝え、そのうえで話せる工程・役割・判断を示します。以下は編集部の文例です。
この案件は守秘義務があるため、顧客名、具体的な構成、社内資料はお伝えできません。開示可能な範囲で、私が担当した工程、課題に対して行ったこと、チーム内での役割をご説明します。この内容で確認したい点があれば教えていただけますか。
応募先からポートフォリオを求められた場合も、業務コードを個人の保存先へ複製して見せないようにします。公開が許可された実績ページや、自分に公開権限がある制作物など、代わりに提出できるものがあるか相談してください。提出物がない場合は、書面や面談による説明で代替できるかを聞きます。
AIで言い換える場合にも、非公開の原文をそのまま入力しないようにします。入力情報を整理する手順はAIで職務経歴書を添削するときの個人情報・機密情報の確認で扱っています。
手元のメモに書く項目は「開示確認済みの経験/担当工程/自分の役割/行動/伝えられる結果」の五つです。会社資料の文章をコピーせず、説明してよいと確認できた事実だけを短く書き出します。
応募前は、書類と共有する画面を確認する
- 数値・顧客名・案件の組み合わせに、開示範囲を超える情報が残っていないか
- 添付ファイルに会社資料、コメント、変更履歴、不要な個人情報が残っていないか
- 記載した工程・役割・成果が、面談でも事実として説明できるか
- 共有リンクに、自分が公開してよい資料以外が含まれていないか
- オンライン面談で、業務中の画面や通知を誤って共有しない準備ができているか
書き方や応募先を相談する場合は、キッカケエージェントの支援内容と利用前の確認点を確認できます。相談先にも、秘密情報を含む原資料を渡すのではなく、開示可能な説明を持っていくことが出発点です。
公式情報・確認日
公式情報の確認日:2026年10月13日。制度・サービス・採用の案内は変わる場合があります。本文の比較表、記入例、質問例は編集部の提案で、特定の企業の採用条件や選考結果を保証するものではありません。

